高齢犬との暮らし
7歳を超えたらOVER 7 YEARS
7歳を超えたワンちゃんは人でいうと40歳代(小型・中型犬)~70歳代(大型犬)に相当するといわれています。 一般に動物はがまん強く、痛みを訴えることができないので、飼い主様がギリギリまで不調に気づきにくい傾向があります。 そのため健康診断を受けて状態を把握してあげることがとても大切です。高齢になれば半年に1回程度を目安にしましょう。
このページでは7歳以上のワンちゃんとの暮らしで気を付けていただきたいことを記載しています。 基本的な予防や病気については、「ワンちゃんの健康管理」についてのページをご覧ください。
人と犬の年齢換算表(目安)
人間 | 44歳 | 48歳 | 52歳 | 56歳 | 60歳 | 64歳 | 68歳 | 72歳 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
小型 中型犬 |
7歳 | 8歳 | 9歳 | 10歳 | 11歳 | 12歳 | 13歳 | 14歳 |
大型犬 | 7歳 | 8歳 | 9歳 |
こんな症状ありませんか?
下記のチェックリストが1つでも当てはまる・気になることがある場合は診察時にお尋ね下さい。 健康な状態でも、年に1回は定期健診を受けましょう。
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体重の減少がある
水を飲む量が増加してきた
嘔吐する頻度が増加してきた
食事の嗜好性が変化してきた
糞便の色が変化してきた
尿の回数や量が多くなってきた
尿の回数や量が少なくなってきた
歯肉からの出血などの異常がある -
食事の際に食べ物を口からこぼす
目からの分泌物の色が変化してきた
(白・黄色・血の混じったような茶色)
耳の内部が汚れている
被毛の状態が変化してきた
(乾燥・ツヤが無い・フケ・脱毛)
寝る時間が長くなってきた
物事への関心が低下してきた
シニアのワンちゃんへの当院の取組APPROACH TO SENIOR DOGS
当院ではシニアのネコちゃんに向けた取組みとして、シニア動物全般に向けた獣医療をご提供するシニア科を開設しています。シニア科では下記のように生活面のサポートから、獣医療面でのサポートまで幅広く対応させていただいております。
シニア生活のサポート面
生活スタイルのご相談
シニア期になると、お家での過ごし方やお散歩の仕方、病気との付き合い方などで、若い頃と様々な変化が出て来ます。特に高齢期になると痴呆や介護の問題が出てくることもあります。飼主様と動物の楽しい暮らしの為に様々なご相談をお受けしています。
食事管理のご相談
食事は健康管理の基本です。高齢になるとご飯を食べない、量が減ったなどのご相談をよくお受けします。また、持病がある場合は療法食などの食事療法も必要となります。毎日のことである食事についてもご相談をお受けしています。
一時預かり(デイケア)
シニア期になると持病があったり、痴呆が始まったりなどで、猫ちゃんだけでお家で過ごすことが難しくなることもあります。一方で飼主様自身が一定時間、家を空けなければいけないこともあるかと思います。そういった場合に安心してお出かけいただけるように、当院で一時預かりも行っております。
シニアのグルーミング
シニア期になると加齢により筋力が低下し、運動を嫌がったり、踏ん張ることが難しくなったりします。そういったワンちゃん・猫ちゃんに対して、爪切り・足回りカット、肛門腺絞りなどのグルーミングも行っております。動物病院だからこそ、定期的に健康チェックも兼ねてグルーミングを行っております。
シニアの病気や治療でのサポート面
シニアのワンちゃんに優しい診療
セカンドオピニオン
負担の少ない検査
高齢になるとちょっとしたことがストレスに繋がり、動物への負担となるケースがあります。当院ではできる限り検査においても動物へ負担が少なくできる機器や方法を用いて行っております。
負担の少ない治療
高齢になると体力や免疫が低下するため、若い頃の治療法と方針を変えてあげることも必要です。動物の状態や飼主様のご要望に応じ、負担の少ない治療法含め、複数の治療法をご提示させていただいております。
病気の早期発見のための定期検診
高齢になるにつれ様々な病気を発症するリスクが高まります。心臓や内臓疾患など慢性化する前に早期治療が重要な病気も多くあります。病気の早期発見のためには定期的に健康診断を行うことが重要です。早期発見、早期治療を目指しましょう。
負担の少ない手術
手術時にはできる限り動物への負担の少ない方法を取り入れています。麻酔時間の短縮や、体内に糸を残さない方式、手術時間が短くなる方法など、動物への負担軽減を常に考えております。
4大予防をしっかりと継続しましょう
毎年、4大予防(①狂犬病予防接種、②ワクチン接種、③フィラリア予防、④ノミ・ダニ予防をキッチリと継続しましょう。
これらの予防はワンちゃんの健康の基本となります。
シニア期の健康診断の重要性NEUTERING & SPAYING
健康な時期の検査数値を把握しておきましょう
定期的に健康診断を受けておくと、健康な時期の検査数値を把握しておくことができます。
教科書などに記載のある「標準的な検査数値の範囲」は存在しますが、動物個々でその正常値が異なります。健康時のデータを把握していればその子の適正範囲が分かりますので、異常があった場合にも安心です。
シニア期は生活スタイルが変わっていきます
年を重ねるにつれて、徐々に様々な機能や免疫力が弱くなっていくため、生活環境、習慣も、体の変化に合わせて変えていく必要があります。 病気だけではなく認知症の可能性などもありますので、日頃の生活の様子も合わせて獣医師にご相談ください。
早期発見、早期治療が重要です
心臓や腎臓の病気、がんなどは、発生した初期段階では症状があまりないため、健康診断での早期発見が大切です。痛みなどの症状が出るころには手遅れとなっているケースもあります。定期的に健康診断を受診していただくことで、病気の早期発見を行うことができます。
シニア特有の病気を見つける検査項目
健康診断では、身体検査はもちろん、血液検査やレントゲン検査、エコー検査などを組合わせて行っていきます。
腎臓疾患、心臓疾患、腫瘍などの特に高齢期に多い病気でも血液検査で見つけることができるようになってきました。これらは麻酔などをかけることもないため、動物への負担も少なくて済みます。
定期的な検査を行ってあげましょう。
加齢に伴う体の変化NEUTERING & SPAYING
口腔内の変化
この年代になると、定期的なデンタルケアをしていない限り、歯石の付着や歯周病などのお口のトラブルを抱えている子が増えてきます。放っておくと、悪臭の原因だけでなく心臓病の原因にもつながることもあります。当院では口腔内の状況を調べる簡易デンタルチェックから、食事療法、歯磨き指導、歯石除去処置(スケーリング)なども行っております。 毎日の食事を美味しく食べるためにも口腔内の状態をチェックしてあげましょう。
関節の変化
年をとると、若い頃に比べ動きが悪くなり、遊ばなくなることもあります。 これを老化現象と勘違いしがちですが、関節の軟骨部分がすり減ったり破壊されたりして、股関節・肘・膝・肩など様々な関節に痛みが出る「変性性骨関節症」という病気である可能性もあります。 お散歩時などに注意して観察してあげましょう。
心臓の変化
心臓は生命を維持する上でとても大切な臓器のひとつです。しかし、特にチワワやシーズー、マルチーズなどの小型犬は「弁膜症」という病気になりやすいといわれています。弁膜症とは心臓の中にある4つの部屋を分ける弁(ドアのようなもの)が上手く働かなくなり、血液を全身に送る事ができなくなってしまう病気です。咳をするようになった、お散歩の途中で疲れやすいなどの症状が出てきます。一度心臓病になると完全に治すことは難しいですが、早期発見することでお薬や処方食での治療を始めれば進行を遅らせることができます。
眼の変化
加齢と共に眼の中心が白っぽくなる変化に「白内障」と「核硬化症」があります。核硬化症は水晶体というレンズが硬くなり、すりガラス状に見えるようになる老齢性の変化です。見えづらくなりますが、失明はしないため生活に支障は出にくいです。同じような眼の見え方で気をつけなければならないのが白内障です。進行すると視力低下や失明したり、炎症を起こすと痛みを伴ったりします。白内障を早期に発見できれば進行を遅らせる点眼薬もあります。
腫瘍ができやすくなる
ワンちゃんの死因第1位はがんです。加齢と共にがんはできやすくなり、比較的異常を確認しやすい体の表面にできるがんもあれば、肺・肝臓・骨など眼に見えない臓器のいたるところにできるがんもあります。特に肝臓や脾臓などはがんができても症状が出ることはなく、気づいた時には手遅れということもよくあります。がんを早期に発見できれば手術、抗がん剤、放射線治療などで完治または進行を遅らせることができます。
高齢のワンちゃんに多い病気NEUTERING & SPAYING
脊椎の病気(変形性脊椎症など)
老齢期に多く見られ、腰痛や歩行障害などが起こります。重症化すると後肢がマヒし、寝たきりになってしまうこともあります。
生殖器の病気(子宮蓄膿症:女の子)
細菌感染などで子宮の中に、膿が溜まる病気です。避妊手術をしていない6歳以上のワンちゃんに多く見られます。ホルモンバランスの乱れや、高齢に伴う免疫の低下で細菌に感染するリスクが高くなるといわれています。
生殖器の病気(前立腺肥大:男の子)
オス犬の膀胱の後方で尿道を囲むように存在する前立腺が徐々に肥大してくるのが前立腺肥大です。進行すると、排便・排尿障害や細菌感染を伴う前立腺膿瘍を引き起こすこともあります。
肛門周辺の病気(会陰ヘルニアなど)
去勢手術をしていないオスがかかりやすくなります。高齢になり、おしりの周りの筋肉が緩んできたためにできた穴(ヘルニア孔)から腸や膀胱が脱出し、排便・排尿障害を起こします。
腫瘍(乳腺腫瘍、リンパ腫など)
腫瘍は癌や肉腫とも呼ばれ、高齢になると発生しやすくなります。乳腺腫瘍はメスに最も多く発生する乳腺にできる腫瘍です。特に避妊をしていないメスでの発生率が高い傾向にあります。その他にも人間と同様、様々なところに腫瘍が発生します。
心臓の病気(僧帽弁閉鎖不全症など)
僧帽弁とは、心臓の左心房と左心室の間に存在する弁で血液が逆流しないようにする重要な役割を果たしています。この弁が異常をきたし心不全による咳・運動不耐・失神・肺水腫などの症状が出ます。
関節の病気(変形性関節症など)
主に、中高齢期の股関節・肘・膝・肩に良く見られ、関節の軟骨組織がすりへったり、破壊されたりすることにより、関節が変形し関節の動きが悪くなったり慢性的な炎症や痛みを伴います。
お口の病気(歯周病など)
歯と歯ぐきの間に入り込んで増殖した細菌によって歯ぐきが炎症を起こし、歯を支える部分が破壊されていく病気です。歯に溜まった歯垢や歯石が主な原因となります。上記の病気は一例です。また、病気を予防するためにも日頃のケアに注意しましょう。